tantan たんたん

20160122c
『たんたん第1話。』

(ブログから抜粋。)

2009年11月2日の夜のこと。

「ねえねえ、
ウチの近くでみゃあみゃあネコが鳴いてるんだよね。
暗くて姿は見えなかったんだけど。」
深夜、撮影から帰ったら妻が。
ここまではよくある話。

明けて翌日。
自分の誕生日と言う事もあり、二人でお出かけ。
「そういえばさ、昨日のネコってどの辺にいたの?」
「この辺だよ。にゃー、にゃー。
もういないみたい。」
(呼びかけたが返事は無い。)

「・・・あの、いるんだけど。」
黒と白のコの背中が垣根の奥に見える。
どうやら一晩中ここにいたようだ。
(昨夜は雨だったのに・・・。)

「おい、どーしたー。にゃんこー。」
垣根をかき分けて触っても、ちらとこちらを向くだけ。
「もしかしてケガしてんじゃね?触っても動かねえもん。」
「ええっ!どうしよううう。」
「にゃーにゃー。」

あわてて家に戻り、
まずは動物病院を探す。
自分の誕生日でもある11月3日は祝日、やってる所は少ない。
10本位電話してようやく確保。
カゴとタオルを持ってまた同じ所へ。
まだいた。

「にゃんこー、病院行くぞー。」
「にゃあにゃあ。」
両脇を触っても全然暴れずいいコ。
でも両脚は引き摺っていて動かない。
奥に手を伸ばし、垣根の外に。

(うわっ!!)
背骨が折れて飛び出ている。
出血も酷い。

「やっぱ、車に轢かれたんじゃねーかな。」
カゴに入れて車で向かう。
全然騒がないし、
暴れないし、とてもいいコ。
「もうちょっとだぞー。
お医者さんだから、もう大丈夫。」

看てもらった結果、
やっぱり背骨が完全に折れて突出していた。
最高に快くなったとしても
下半身はもう動かないらしい。

でも、すごくイイ先生。
頭をなでながら
「今日、ここに連れて来てもらってよかったね。」
あとはお願いします、先生。

数日後、
仕事の合間を縫って入院先に面会に行く。
少し元気になったみたい、よかったあ。
ここの病院はだっこさせてくれるんだね。
腿の所をしっかと掴んでいて可愛い。

先生の話だと、
事故後、放置されていた時間が長かった為
感染症が酷く、まだ手術が出来ない状態らしい。
背骨が折れた事で神経も完全に断裂してしまい
やっぱり歩けるようになるのは無理との事。

「いろいろ検査した結果、正直ダメだと思いました。
でも、あの連れて来られたタイミングが
助かるかどうかのギリギリだったみたいですね。
よくここまで持ち直しましたよ。」

(あ、あぶねー。よかったあ、間に合ってえ。
これも運命だよ。きっと!)

そして。
「今回は善意からこのコを連れて来てくれたと思うんです。
それはとても良い事で、このコも感謝しているでしょう。
ただ、今後の事に関しては話は別です。
見ての通り、このコは背骨が折れてしまっているので
もう歩く事は出来ません、おしっこやうんちも自分では出来ません。
だから、まず圧迫排尿を覚えてもらう事になります。
一日二回は絶対にやってもらいます。
やらないと命にかかわる病気になってしまいますので。
あと、これだけのケガをしているので
現実的な話、もの凄くお金がかかります。
時間、労力、お金が絶対的に必要になります。
だから、もしこのコの面倒を見ようと思って下さるのなら
絶対的な「覚悟」が必要になります。
ただ、
面倒が見れないと言ったとしても
それは責められる事でも何でもありません。
そこまでして野良猫の面倒はみると言うのは
普通は無い事ですから。
ただ、可哀想と言うだけの理由で飼おうと思わないで下さい。
それでは皆不幸になります。
今日でなくてもいいので、よく考えてお返事下さい。」

「大丈夫ですよ、ウチが面倒見ます!いいよな♪」
「うん!」
妻と共に即答した。

今後の事をいろいろ話して今日は終わり。
ウチに帰るまでは、まだまだ時間がかかるみたい。
早く快くなっておうちに帰ろう!

「可愛い」だけでは猫は飼えない。
二人共、以前猫を飼っていたので
それはよく知っていた。
だけに、以前からウチでは
「ネコを飼うか否か。」
が懸案事項だった。

二人共、超ネコ好きなんだけど
喘息持ちだからだ。
だから、ひとつ決まりを作った。
「いくら可愛くても可愛いと言う理由だけでは飼わないようにしよう。
ただ、何かどうしようもない事が起きた時は飼ってもよしとする。」
いきなりではあるが、その時はやってきた。

会った日が誕生日だったので、
名前は「たんたん。」
今日からウチは三人家族になった。

 

『たんたん第145話。』
(ブログから抜粋。)

2016年11月29日

(ん?たんたん、お腹張ってんな。)
朝の圧迫排尿、お腹を触ったら何だか張っている。
先日の大腸炎の影響かなあ。
朝イチで薬もらいに行くから、
ついでに聞いてみよう。

お昼過ぎ、
たんたんの横に座って様子を見る。
ゴハンもちゃんと食べたし、いつも通りのたんたん。
具合が悪そうに見えない。
でも、
何故か心がざわつく。
午後、病院に連れて行こう。

病院に着いても普通なたんたん。
でも、レントゲンを撮ったら
胃が前々日の倍くらいに膨らんでいて、
そのまま入院になってしまった。
喘息の症状は出ていないので、
腸そのものに疾患があるのかも、と言う事だった。
ざわつきは正解、連れて来てよかった。

 

2016年11月30日

たんたんを迎えに行こうと、病院に電話。
ところが、お腹の張りがとれていない上に、
喘息の症状まで出てしまっているらしい。
ステロイドがあまり効いていないので、
元々あった心臓疾患の可能性もあるらしい。
しばらくは酸素室で安静が必要とのこと。

20時頃、携帯の呼び出し音。
(ん?病院?)

たんたん、
呼吸が口呼吸になってしまい、
この状態が続くと危険とのこと。
一旦電話を切り、着替えてすぐ電話しなおす。
担当の先生に電話を変わってもらい、
今行った方がいいか聞く。

「今は落ち着いたので大丈夫です。
驚かせちゃってすみません。」
(ふう。)

 

2016年12月1日

朝まで電話は無し、よかった。
連絡が無いのはイコール良い知らせ、
でも、
電話があった時イコール何かあったと言うこと。
いつ電話が来るか分からない緊張感、
気持ちはずっと張りつめたまま。

10時過ぎに電話、院長先生と話す。
昨日一昨日に比べたら、お腹の張りは快くなったが、
まだ酸素室からは出られないとのこと。
呑気のせいで、ゴハンが食べられないのも問題、
丸々2日食べていない。
ただでさえ、大腸炎で体重が減っているので心配。
(10%以上落ちている。)
管で食事をさせようと考えているらしいが、
呼吸が安定しないと鼻から管は入れられない。
いろいろ考えてみます、とのことだった。

食べていない=体力が落ちる、ここが心配。
胃の空気を外科的に抜く事は出来るのだが、
「今はそこまでする必要は無いでしょう。」とのこと。
先生は命に関わるとこまで行っていないと言っているので、
とにかく待とう。
(自分も喘息で入院した時は、1週間だったし。)

18時15分、
再び病院から電話。
たんたんの状態があまり良く無いらしく、
今後の治療の事で話をしたいので、
来れるのであれば、今来て欲しい旨。

18時40分、
病院到着。
たんたん、
はあはあと苦しそうに横になっている。
ちいさな両腕の点滴が痛々しい。

たんたんに近寄ると、
黒目が動いて「あ!」って顔をした。
分かったのかな?
おとうちゃん来たよ!

院長先生曰く、
胃の空気(呑気)はかなり抜けたけれど、
見ての通り、呼吸が安定していない。
酸素室は数値限界の50%濃度(日常の空間は21%)
なのに、効果が出ていない。
そこで、別の薬を使ってみたが、
遅効性なので、まだ何とも言えないらしい。

そこで最後に驚きのひとこと。

「たんたんちゃん、
もしかすると頑張り切れないかも知れないです。」

「えっ」

妻にも電話を入れる。
妻は仕事中だったが、抜けて来るとのこと。

たんたん、
ずっとこっちを見てるけど、
たまに目が虚ろになる。
酸素室に貼り付いて声をかける。
(たんたん!頑張れ!!)

処置室だし、診察時間も過ぎているので、
声を出さずに声がけ。
それに反応してくれたのか、
起き上がろうとするたんたん。

(あ!たんたんが立った!)
はあはあ言いながら、しっかと立ったたんたん。
でも、すぐにぱたと倒れてしまった。
食べてないから、力が出ないんだろう。
頑張れ!たんたん!!

20時過ぎ、妻が到着。
二人でたんたんを見守る。
たんたん、呼吸は苦しそうだけど、
少し眠そうに目を細めている。
薬が効いて来たのかも知れない。
唇や舌にチアノーゼは出ていないし、
院長先生も、この薬が効いてくれればとのこと。

21時過ぎ。
診察時間を大幅に過ぎた事もあり、
後は先生に任せ帰宅。
先生!よろしくお願いします!
頑張れ!たんたん!!

 

2016年12月2日

それから6時間後、午前2時59分。
家の電話が鳴った。

飛び起きて受話器をとるが切れている。
病院からの電話はいつも携帯。
「間違い電話かな、心臓に悪いよ。」
身体の力が抜けた。

そこへ携帯の呼び出し音。
(!)
スマホの画面には動物病院の名前。
「もしもし!」

「残念ですがたった今、
たんたんちゃんの呼吸が
止まってしまいました。」

(嘘だろ!)
心臓が飛び出しそうになるくらいの激しい動悸。
すぐさま妻と家を飛び出す。
車の運転、焦るな焦るな。

病院へは車で15分程。
たんたんの居る酸素室は、
診察室を通り抜けた奥にある。
「先生!」

たんたんが、
寝ている様に横たわっていた。

「たんたん!」
側に近寄ると目も口も閉じたまま、
穏やかな顔をしている。
どう見ても寝ている様にしか見えない。

「たんたん!」

「たんたん!!」

たんたんを撫でてあげる。

まだあったかい!
まだあったかいよ!!

二人でわあわあ泣いた。

 

苦しかったねたんたん。
よく頑張ったねたんたん。
一緒にいてあげられなくて
ごめんね、たんたん。

たんたん、
おとうちゃんとおかあちゃん
迎えに来たよ。

さあ、皆で一緒に帰ろうね。

 

妻とたんたんと自分。
いつも通りの道を
いつも通りに帰る。
自分が運転
妻が抱っこ、
いつもとおんなじ。

 

家に着くと、
たんたんの大好きな”お船”(ベッド)に
たんたんの大好きな”ふわふわ”を敷き、

そっと寝かせてあげる。
「ほら、たんたん、おうちだよ〜。
よかったね!」

たんたん、
こうして撫でていても、
ふわふわはいつもと変わらない。
肉球のぷにぷにも。

こんなに悲しいのに
こんなに悲しいのに
たんたんを見ていると、
だんだん口元が緩んで来てしまう。

そう、
たんたんを見ているだけで
笑顔になれるんだ。

たんたんのお部屋で皆一緒。
いつも通りの風景。
いつも通りの時間。
たのしいなあ。
幸せ。

 

お葬式は同日行う事になった。
ここは”うに”も居る霊園、
仲良くしてもらうんだよ。

霊園からお迎えの車が来た。
たんたんは、
妻に抱っこされるのが大好き。
さ、
いつもみたく抱っこしてもらいな。
よかったね、たんたん。

霊園に到着。
たんたんの一番好きなふわふわを敷き、
頼んでおいた生花を周りに。
たんたん、
ピンクのバラがよく似合う。
さすが女のコ、可愛いね、たんたん。

横にはちょっとお高めのマグロの缶詰。
お腹空いたね、たんたん。
3日も食べてないからお腹ぺこぺこだね。
沢山食べるんだよ。

いつもみたく、
たんたんの頭の後ろ辺りに
鼻を押し当てる。
たんたんはお陽様のいい匂い。

 

お線香をあげた後、
最後のお別れ。

少しずつ
少しずつ、
火葬場の扉が閉じて行く。

(たんたんが行っちゃう!)

でも、
一人ぼっちじゃないよ、たんたん。
二人でずっと見てるから。
それに、
おとうちゃんもおかあちゃんも
いずれたんたんの元へ行く。
それまでちょっとだけ待っててね。

「じゃあね、たんたん。」

雲ひとつ無い晴天の中、
たんたんは
真っ白な煙になって
空に昇って行った。

 

たんたん、
もっと一緒にいたかった。
もっと遊んで
もっとなでなでして
もっと一緒に寝て
ごめんね、たんたん。

たんたん、
今までありがとう。

事故に遭ったたんたんを保護して7年、
本当にいろいろあったね。
おとうちゃんとおかあちゃん、
とっても幸せだった。

この7年間、
人生で一番幸せな時だった。

たんたんは
いつも二人の心の中に居る。
これからもずっと一緒。

じゃあね、たんたん。
ありがとう、たんたん。